AiBow Ink / 使い方ガイド
English version →AiBow Ink パラメータガイド
対象バージョン: v1.0 / 最終更新: 2026年9月13日
AiBow Ink は、文字や図形の形からインクが滲み出し、流れ、広がっていく様子を GPU で計算する After Effects プラグインです。このページでは全パラメータを、 「なぜそうなるのか」まで含めて解説します。まず 90 秒のチュートリアルを見てから 読むと早いです。
AiBow Ink のしくみ
パラメータを触る前に、内部で何が起きているかを知っておくと理解が一気に楽になります。 AiBow Ink は次の3段階で絵を作っていて、エフェクトコントロールのグループ分けが そのままこの3段階に対応しています。
| 段階 | 内容 | 対応するグループ |
|---|---|---|
| ① 噴出 | どこからインクが出るか | 1. Emitter Setup |
| ② 流れ | どう動くか(流体の計算) | 2. Fluid Physics |
| ③ 見た目 | どんな色・質感で描くか | 3. Color & Style / 4. Edge & Glow |
「思った絵にならない」ときは、原因がどの段階にあるかを考えると、 触るべきパラメータがすぐ絞れます。
すべての鍵は「濃さ」
内部では、画面を細かいマス目(グリッド)に区切って、各マスにインクがどれだけあるか という数値(濃度)を計算しています。そして色も、透明度も、光り方も、 全部この「濃さ」から決まります。たとえば画面に出る色が配色の片端ばかりに なるのは「インクが薄い」という意味です — その場合は色ではなく Flow Rate を触るのが正解です。
フレーム0では何も出ません
インクは時間をかけて溜まっていきます。フレーム0はまだ何も溜まっていない状態なので、 ほぼ透明です。さらに初期設定では Composite Mode が Ink Only(インクだけを表示)のため、元の文字も表示されません。これは故障ではありません。タイムラインを 1〜3 秒進めてください。
毎フレーム、最初から計算しています
どのフレームでも「0フレーム目から今まで」を計算し直しています。おかげで どのフレームに飛んでも必ず同じ絵になり、マルチフレームレンダリングでも壊れません。 代償として後半のフレームほど計算が重くなります(動作を軽くする参照)。
まず触るべき6つ
パラメータは40個以上ありますが、効果が大きいのは次の6つです。
| 順番 | パラメータ | 何が変わるか |
|---|---|---|
| 1 | Preset | 全体の方向性 |
| 2 | Flow Rate | インクの量(濃さ) |
| 3 | Color Preset | 配色 |
| 4 | Dissipation (Lifespan) | インクが消えるまでの長さ |
| 5 | Turbulence | 揺らぎの量 |
| 6 | Emitter Mode | インクの出方 |
プリセット一覧
エフェクトの一番上にある Preset から選ぶと、完成した設定が丸ごと 読み込まれます。前のプリセットの設定が中途半端に残ることはありません。
| プリセット | どんな絵になるか |
|---|---|
| Custom | 何もしません。手で調整するときの待機位置 |
| Sumi-e Bleed | 墨絵風。紙に染み込み、縁が濃く溜まる |
| Neon Glow | ネオン管のように光る |
| Pastel Contours | 等高線がはっきり出るパステル調 |
| Rising Smoke | 下から立ち上る煙 |
| Ink in Water | 水中に落としたインクが広がる |
| Liquid Flame | 炎 |
| Monochrome Smoke | モノクロで渦を巻く煙 |
| Falling Drip | 一滴が垂れ落ちる |
| Source Colors | 元レイヤーの色をそのまま流す |
| Ink Reveal | 元レイヤーがインクの形で現れる |
| Ink Backdrop | 背面に下地として広がる |
| Wind Streaks | 横に流れる筋 |
次の項目だけはプリセットが書き換えません: Emitter Point / Grid Resolution / Processing / Simulation Length / Master Opacity。 これらは絵の方向性ではなく「その場面やお使いの PC の都合」で決まるものだからです。
1. Emitter Setup(どこからインクが出るか)
Emitter Mode- インクの出し方。下の3モードから選びます
Emitter Point- Bloom 専用。噴出の中心位置。コンポ上でドラッグできます
Flow Rate- インクの量。上げると濃くなります。既定 50
Emission Radius- 噴出口の太さ。既定 15
Motion Impulse Scale- 噴き出す勢い(注入される速度)。既定 10。0 にすると静かに湧きます
Direction- Direction モード専用。どの向きに流すか(to Up / Down / Left / Right)
Emitter Mode の3種類
| モード | どうなるか | 使いどころ |
|---|---|---|
| Layer Alpha | 文字や図形の形そのものからインクが出る | 一番よく使う。ロゴ・タイトル |
| Direction | 画面の一辺から一方向に湧き上がる | 立ち上る煙、下から満ちるインク |
| Bloom | Emitter Point の1点から放射状に膨張する | 水中に落としたインク、爆発、一滴の染み |
Layer Alpha は周りが透明なレイヤー(文字・図形)に適用してください。 平面(ソリッド)に適用すると画面全体が噴出源になってしまいます。Direction と Bloom はレイヤーの形を使わないので、 平面に適用して構いません。
モードを切り替えると、そのモードで意味を持たないパラメータは自動的に グレーアウトします。グレーのものは無視して構いません。
2. Fluid Physics(どう動くか)
Grid Resolution- 計算の細かさ(128 / 256 / 512)。上げるとディテールが増え、重くなります。質感にも影響するので、変えたら他の値も再調整を
Vorticity (Swirl)- 渦の強さ。上げるとくるくる巻きます。既定 40
Viscosity- 粘り。上げるとどろっとします。⚠️ 0.1 より上で計算量が約2倍
Dissipation (Lifespan)- インクが消えていく速さ。下げると長く残ります。既定 3
Gravity X (Wind)- 横方向の浮力。インクがある場所だけを押します
Gravity Y (Buoyancy)- 縦方向の浮力。プラスが下向きです
Turbulence- 乱流。有機的な揺らぎを加えます。0 だとオフ
Turbulence Scale- 乱流の渦の大きさ。小さくすると細かくざわつきます
Turbulence Detail- 乱流の複雑さ(1〜6)
Turbulence Speed- 乱流のパターンが変化する速さ
Wind X / Y (Uniform)- 風。画面全体を一様に押します
Gravity と Wind の違い
Gravity はインクがあるところだけを押します(浮力に近い)。Wind は画面全体を一様に押します(風に近い)。 一方向に流したいなら Wind、重さ・軽さを表現したいなら Gravity です。 同じ数値でも Gravity の方が強く出ますが、これは仕様です (一様な力は流体の計算過程で打ち消されやすいため)。
Turbulence の使いどころ
煙や炎のような「有機的に見えてほしいもの」では 60〜150 くらいを入れると 一気にそれらしくなります。自然に漂わせたいときは Gravity / Wind を 0 のままにして Turbulence に任せるのがコツです。
Viscosity を強くすると Gravity や Wind の効果が打ち消されます。「重力を上げたのに落ちない」ときは、まず Viscosity を 0 に。
3. Color & Style(色と質感)
Palette Mode- 色の決め方(下の3種類)
Color Preset- Gradient Ramp 用の5配色
Color 1〜6- Custom Colors 用。Color 1 (Core) が濃い中心、Color 6 (Faint) が薄い外側
Ramp Interpolation- 色のつなぎ方。Perceptual (OkLab) 推奨(濁りにくい)
Contour Bands- 等高線の数。0 でなめらか。8〜16 が使いやすい範囲
Band Softness- 等高線のぼかし
Edge Threshold (Crisp)- この濃さ以下は透明になります
Edge Softness- 輪郭のぼかし幅。下げると薄いインクも見えるようになります
Glow Intensity- 濃い部分の明るさ(広がりません — 広がるのは Bloom)
Use Appearance Curve- オンで上2つの代わりにカーブ指定(後述)
Palette Mode の3種類
| モード | 色の決まり方 | 使われる設定 |
|---|---|---|
| Gradient Ramp | あらかじめ用意された配色 | Color Preset のみ |
| Multi-Color Source | 元レイヤーの色をそのまま使う | なし |
| Custom Colors | 自分で6色指定 | Color 1〜6 |
Color 1〜6 を変えても色が変わらないときは Palette Mode を 確認してください。Gradient Ramp のままだと Color Preset の配色が使われます。非常によくある勘違いです。
Color Preset の5種類
| プリセット | 薄い → 濃い |
|---|---|
| Pastel Dream | 青 → 白 → 赤 |
| Cyberpunk Neon | 青 → シアン → マゼンタ |
| Sumi-e Ink & Gold | 黒 → 焦茶 → 金 |
| Liquid Flame | 黒 → 赤橙 → 白 |
| Monochrome | 黒 → 灰 → 白 |
これは「濃さ」と色の対応表です。インクが薄いままだと 左端の色しか出ません。
4. Edge & Glow(輪郭と発光)
Bloom Radius- 光の広がる幅。⚠️ 0 だとブルームは出ません
Bloom Intensity- 光の強さ
Bloom Color- 光の色
Rim Width- 輪郭線の幅。0 でオフ
Rim Color- 輪郭線の色
Edge Darken (Paper Bleed)- 縁を暗くする量。本物の墨が縁に濃く溜まる感じになります
Texture Layer- 紙質などのテクスチャに使うレイヤーを指定
Texture Strength- そのテクスチャの強さ
Bloom Intensity を上げても光らないときは Bloom Radius が 0 になっていないか確認してください。Glow Intensity(Color & Style)は濃い部分を明るくするだけで広がらず、 実際に光がにじむのは Bloom の方です。
合成とマスター設定
Composite Mode(インクと元レイヤーの重ね方)
| モード | 結果 |
|---|---|
| On Top | インクが元レイヤーの上 |
| Behind | インクが元レイヤーの後ろ |
| Mask Source | 元レイヤーの形の中だけにインク |
| Additive Glow | インクを加算合成(光る感じ) |
| Ink Only | インクだけ表示。元レイヤーは消えます(初期値) |
| Reveal (Ink Matte) | 元レイヤーがインクのある所に現れる |
| Erase (Ink Matte) | 元レイヤーがインクのある所から消える |
元の文字を消したいときは初期値の Ink Only のままで OK です。 タイムラインでレイヤーの目のアイコンをオフにすると噴出源ごと消えてインクも出なくなります。映像の切り替え(トランジション)に使うのは Reveal / Erase の方です。
Master Opacity- インクの不透明度。元レイヤーには影響しません。既定 100
Simulation Length (steps)- どこまで動き続けるか。既定 300。超えると全フレームが同じ絵になります(下記)
Processing- 計算に使う装置(Auto / GPU (CUDA) / CPU)。基本 Auto のまま。GPU が無い環境では自動で CPU になり、結果は同一です
Simulation Length を超えると止まります
設定値を超えると、それ以降は全フレームが同じ絵になります(インクが止まって見える)。 既定の 300 は 30fps のコンポでおよそ 10 秒ぶん、24fps ではおよそ 6 秒です。長いカットではこの値を上げてください。 この値は処理時間の上限でもあります — 上げるほど重くなりますが、 ここを超えて重くなることはありません。
5. Solver(計算の設定)
Bleed (Diffusion)- にじみ。流れとは無関係に、紙に染みるように広がります。0 でオフ。使いやすいのは 1〜20
Use Transition Progress- 進行を時間ではなくスライダーで決めます(下記)
Transition Progress (%)- その進行度。キーフレームを打って使います
Simulation Speed (%)- 全体の速さ。既定 100
Appearance Curve
通常、インクの見え方は Edge Threshold と Edge Softness の2つで「どの濃さから見え始め、どの濃さで不透明になるか」を直線的に決めています。Use Appearance Curve をオンにすると、これをカーブで自由に指定できます。
| やりたいこと | カーブの形 |
|---|---|
| 輪郭をくっきりさせたい | 中央で急に立ち上がる S 字 |
| ふわっと霞ませたい | なだらかな坂 |
| 薄い部分を完全に消したい | 左側をしばらく底に貼り付ける |
| 全体を濃くしたい | カーブ全体を上へ |
横軸がインクの濃さ(左が薄い)、縦軸が不透明度(下が透明)です。 点をドラッグして編集します。オンの間、Edge Threshold / Edge Softness はグレーアウトします(カーブが役割を引き継ぐため)。
トランジションとして使う
映像 A から映像 B へ、インクで切り替える手順です。
- タイムラインに 上=映像A、下=映像B の順で並べる
- 映像 A に AiBow Ink を適用する
Composite Mode: Erase (Ink Matte)/Emitter Mode: Direction/Dissipation: 0/Use Transition Progress: オンに設定Transition Progressにキーフレーム: 切り替え開始で 0 → 完了で 100
これで A がインクに侵食されて消え、下の B が現れます。Use Transition Progress をオンにすると時間ではなくスライダーが 進行を決めるので、完了するフレームを正確に指定でき、 100 → 0 の逆再生もできます(オンの間 Simulation Speed は使われません)。
画面を覆いきらないとき
Flow Rateを上げるMotion Impulse Scaleを上げるDissipationを 0 にする(覆いきる前に消えてしまうため)Simulation Lengthを上げる
困ったときは
| 症状 | 対処 |
|---|---|
| 何も表示されない | タイムラインを1〜3秒進める(最も多い原因)。Layer Alpha で平面に適用していないか、レイヤーの目のアイコンをオフにしていないかも確認 |
| 途中で動きが止まる | Simulation Length を超えています。カットの長さより大きい値に(24fps は既定300で約6秒) |
| 色が一色ばかりになる | インクが薄すぎます。Flow Rate を上げる / Dissipation を下げる / Edge Softness を下げる |
| Color 1〜6 を変えても色が変わらない | Palette Mode を Custom Colors にする(Gradient Ramp のままだと Color Preset が使われます) |
| Contour Bands を上げても段々にならない | インクが薄い。Flow Rate を上げる |
| ブルームが光らない | Bloom Radius が 0 になっていないか確認 |
| 重力を上げてもインクが落ちない | Viscosity が高いと打ち消されます。Viscosity を 0 にして試す |
| Grid Resolution を変えたら絵が変わった | 仕様です。解像度は質感にも影響します(特に Viscosity と Bleed)。変えたら再調整を |
| GPU が使われているか確認したい | エフェクト名の上で右クリック → About で、認識されている GPU 名が表示されます |
動作を軽くする
効果の大きい順です。
Simulation Lengthを下げる — 最も効きます。計算量はこの値に比例しますViscosityを 0 にする — 0.1 より上だと計算量が約2倍Grid Resolutionを下げる — 512 → 256 で大幅に軽くなります(質感も変わります)Bleedを 0 にする — 使っていなければ 0 に- プレビュー画質を 1/2 にする — 計算自体は軽くなりませんが表示は速くなります
作業中は 256 wide、最終レンダリングだけ 512 wide に上げるのがおすすめの運用です。
サポート
ご購入者のサポートは aescripts + aeplugins の製品ページの「Need Support?」からサポートチケットを開いてください(作者に直接届きます。日本語でOKです)。 当サイトの商品ページの「販売者に質問する」からもご質問いただけます。
お問い合わせの際は、After Effects のバージョン / Windows のバージョン / GPU の種類 (About で確認できます)/ 問題が起きたときの設定(Preset 名など)を添えていただくと 解決が早くなります。